後見制度支援信託の運用について
2015.04.23 | お知らせ
家庭裁判所は後見制度支援信託の運用を開始しています 判断能力がなくなった本人に代って親族が本人の財産管理をするために家庭裁判所に成年後見の申立てをすると、家庭裁判所は後見制度支援信託という方法で本人の財産管理をおこなうようにします。
後見制度支援信託とは
後見制度支援信託では、本人の財産の内、現預金のほとんどを信託銀行に信託して、親族後見人が管理する本人の現預金を200万円以内とします。また、本人の財産の内、不動産に関しては親族後見人がそのまま管理し、株式・債券などに関してはケースごとに判断し、換価して信託銀行に信託するか、そのまま親族後見人が管理するかのどちらかとします。そして、本人の生計の収支が、赤字であれば足りない分に相当する金銭が信託銀行から交付されるようになり、黒字であれば信託銀行から金銭交付は認められません。そして、本人の収支が黒字の場合、いずれ親族後見人が管理する本人の預金が200万円を超えていくので、その場合は信託銀行に追加信託をしていくことになります。
手続きの流れ
家庭裁判所に新たに成年後見の申立てがなされると、まず家庭裁判所は親族ではなく専門職(弁護士・司法書士など)を成年後見人として選任します。そして、選任された専門職後見人はその事案が後見制度支援信託に適するかどうかを検討します。後見制度支援信託に適しない場合とは、本人の財産に信託すべき現預金がほとんどない場合や、本人の遺言書があって本人が自分の預金を誰に相続させるか詳細に決めているような場合です。仮にその事案が後見制度支援信託に適しないと判断されると、専門職後見人がそのまま継続して成年後見人の事務をおこなうようになり親族は成年後見人に選任されません。その事案が後見制度支援信託に適すると判断されると、専門職後見人が信託銀行と信託契約をして、その後、専門職後見人は辞任し、親族後見人が選任されます。新たに選任された親族後見人は、専門職後見人から200万円以内の預金と不動産など本人の財産を引き継ぎます。
専門職後見人の報酬について
後見制度支援信託に適する事案で、専門職後見人が選任されてから辞任するまでの期間は、通常6か月程度です。専門職後見人が6か月程度成年後見事務をおこなうことに関して、専門職後見人の報酬が発生します。その報酬は本人の財産から支払われることになり、報酬額については、本人の財産総額の大きさ、財産管理や事務処理の難易度、実際に後見事務をおこなった期間などを考慮して家庭裁判所が決定します。
既に親族後見人が就いている継続案件について
なお、すでに親族後見人が就いており親族後見人が成年後見事務をおこなっている事案でも、後見制度支援信託が採用されるようになりました。その場合、親族後見人のほかに専門職後見人が選任され(成年後見人が2人になります)、専門職後見人は後見制度支援信託に適するか検討し、後見制度支援信託に適すると判断すると、専門職後見人は本人の財産の内預金のほとんどを信託銀行に信託して200万円以内の預金を親族後見人の手元に残すようにします。そして、その後、専門職後見人は辞任します(成年後見人は親族後見人1人に戻ります)。専門職後見人が選任されてから辞任するまでの期間は2か月程度で、その期間に関する専門職後見人の報酬が発生します。その場合の専門職後見人の報酬額も家庭裁判所が決定し、報酬は本人の財産から支払われます。